そんな風にして、俺と壷井さんとのお付き合いは無事、スタートした。

舞い上がっていた俺は、その日のナナの日記の最後の一文について深く考えることもせず、壷井さんと次はどこへ行って何をしよう。とか、壷井さんと何を話そうとか、そんなことばかり考えていた。

いきなり親しくなった俺と壷井さんの関係は、クラスどころか学年じゅうに一瞬にして知れ渡っていた。

堂々と一緒に帰ったり、帰りにファーストフード店に寄ったり、たまに一緒にバイト先まで歩いたり、ごくごく健全なお付き合いではあるけれど、俺はそれで満足だった。

俺は毎日、彼女の発する言葉や彼女と交わすなんでもない会話を楽しみにしていた。

壷井さんと話すたび、俺は彼女をもっともっと好きになった。

彼女が隣にいてくれることが当たり前になり、彼女のことを菜々子と呼ぶようになった。

彼女は俺を、「慶太くん」と呼ぶようになった。

俺は、このままずっとずっと、彼女と一緒にいられると思っていた。

俺たちの関係に変化が起こったのは、二年の終わりごろのことだった。