「水嶋くんって、なんか不思議」
クス、と笑いながら壷井さん。
「え、なんで不思議?」と俺。俺からしたら、壷井さんのほうがよっぽど不思議なんだけど。
「水嶋くんってぱっと見ただけだとね、他の男子と一緒に見える。ちょっとチャラチャラしてるように見えるし、なんにも考えてなさそうに見える」
「ちょ、ひどくね?そこまで言う?」
「あ、違うの、違うの、そういう意味じゃなくて……」
「いやいや、そういう意味じゃん……」
自覚していたこととはいえ、壷井さんの口から言われるとちょっとヘコむ俺。
「たぶん、すごく優しいんだと思う。水嶋くんって」
「え?優しい?俺が?」
そういえば少し前に、七瀬さんにも優しいとか言われたような気がする。だけどなんだかその時とは、感じ方が違うのはどうしてだろう。
「うん」
壷井さんがにっこりと笑って、深く頷いた。これは、褒められてると思っていいのだろうか。
「別に、嫌いな奴にまで優しくしたりしてねぇよ、俺」
「そう?だけど、わたしなんかにも親切にしてくれるから、やっぱり優しいんだと思う、水嶋くんは」
壷井さんは自分の言葉に納得するみたいに頷きながらそう言った。夕暮れ時が近付く放課後の帰り道。タートルの看板が見えてくる。
「その、わたしなんか、ってやつ、やめたら?」
壷井さんが、ちょっと固まる。眼鏡の奥の綺麗な二重瞼が見開いたまま。
「壷井さん、もっと自分に自信持ったほうがいいと思う。俺が言うようなことじゃないけどな」


