壷井さんが、ぷ、と吹き出した。
「え、何、なんで今笑った?」
「だって、水嶋くん、着いてからのお楽しみって。そんなこと言う人だったんだなって……」
漫画に出てくる女の子みたいに口に手を当てて、くすくすと笑う壷井さん。壷井さんのツボがいまいちよくわからない俺。
「そんな面白いか?壷井さんのツボわかんねー」
「え、水嶋くん、ダジャレ……?」
「いや、わざとじゃないから!ダジャレじゃないから!」
弁解する俺を見て壷井さんがまた笑う。ああこれだ、嬉しいと思う俺。やっぱり壷井さんは、俺と二人になったらこんな風に自然に笑ってくれるんだ。
「やっぱ、笑ってるほうがいいな、壷井さんは」
「……えっ」
眼鏡の奥の目をぱちくりさせている壷井さん。やばい、なんか可愛いんすけど。
「笑ってるほうが可愛い。いつも、もっと笑えばいいのに」
壷井さんは黙ってしまう。色白の顔がみるみる赤く染まっていく。やっぱり可愛い。壷井さんってこんな可愛かったっけ。俺って相当見る目なかったんだなと一年の頃を思い出して今更悔しくなる。
「やっぱダメ。このレア感は俺だけが味わいたいかも」
「えっ何?」
「あ、なんでもない独り言」


