どうしても彼のことが知りたくなって急いで教室に戻り、隣りの席の男子におそるおそる声をかけた。

「あの……。このクラスの二宮君って知ってる?」

こんな勇気を出したのは久しぶりだった。

「さあ?」

その男子は首をひねったが、前の席の女の子がいきなり振り返った。

「知ってるー! 三年生でしょ? 有名だよー」

私はクラスメイトの話をしているのに、なぜかひとりで嬉しそうに盛り上がっている。

「いや、先輩じゃなくて……」

「あれ? 違った?」

私の失望が伝わってしまったのか、前の席の女の子は申し訳なさそうに笑った。