「何で俺なんだよ……」
運命を呪うような声が胸に刺さる。
「畜生! 何で俺なんだよ!」
別人のように荒々しい声で吠えたハルは立ち上がり、一直線に海へ向かって歩いて行く。
「ハル! 待って! 待ってよ!」
慌てて後を追い、ハルの腕を捕まえた。
「帰ろう。ここ、寒いし、風邪とか引いたら大変だから」
海水に足を踏み入れようとするハルを、必死で引き戻そうと引っ張った。スニーカーが濡れて、冷たい海水が染みる。
「あっ! 」
彼の腕を掴んでいた両手を振り払われ、はずみで湿った砂の上に倒れた。その私を冷たい目で一瞥し、ハルが海に入っていく。
「やめて! そんなことしたら、死んじゃうよ!」
叫んだあとで、ハルがここに死ににきたような気がして、ゾッとした。
「ハルーッ!」
どんどん海に入っていくハルを、私も腰のあたりまで水に浸かりながら追いかけた。