「けど、やっぱ、こういう独りよがりのメランコリーにつきあわせるの悪いと思って、最後のメール送ったんだ。来なくていいって」
「ぜんぜん、いいよ。むしろ、メールもらって嬉しかった」
ハルが砂浜に腰を下ろしたので、私もその横に膝を抱えて座った。
「私、ハルが呼んでくれたら、どこへだって飛んでいくよ?」
本心からそう言ってハルの顔を覗き込んだけれど、彼は黙ったまま。
――ザザー……。ザザー……。
波の音も昼間と違って不気味に聞こえる、真っ暗な海。
砂浜に寄せては砕ける波も灰色で、見ていると心細くなる。
不意に、ハルが自分の顔を隠すように、額を膝小僧の上に伏せた。
「このまま、どこかへ逃げたい。つむと一緒に」
『逃げる』なんて、いつも前向きなハルとは思えない言葉だ。
それほど、病院に戻りたくないのだろう。
「ハル。私、また毎日、本を持って行くから」
励ます言葉も見つからず、そう言うのが精いっぱいだった。
けれど、ハルはやっぱり私の方を見なかった。