薄暗い街灯が照らす細い道を歩いて行った先に、白い防波堤が見えてきた。

「海……」

結局、何も話さないまま、海岸に着いてしまった。ザザー、と波の音が聞こえる。

「病院に戻る前に、ここの砂浜、歩きたかったんだ」

人影のない砂浜に降りたハルが、両手をパーカーのポケットに突っ込んだまま言う。

「え?」

病院に戻る?

心の中で聞き返した。

「今朝、外来で病院行って、血液検査したんだ。そしたら、数値が悪くなってて。また病院で安静にしてなきゃいけないって」

「嘘……」

それで学校へも来れなかったんだ……。

「なのに、なんでマスク、外してるの?」

「食べ物とか疲労とか、気を付けてても悪化するし。もうマスクなんて、してもしなくても一緒かな、って思ったりして」

いつになく投げやりな言葉だ。ハルらしくない。

「また当分、学校、行けねーわ」

教室の中で生き生きと輝いていたハルの顔を思い出すと、胸が痛んだ。