私が見慣れない大人だからだろうか、正門から構内に足を踏み入れると、登校中の生徒たちが、こちらをチラチラ見てくる。

そう言えば、私も高校生の頃、校内で知らない大人を見つけると、呼び出された問題児の保護者か、はたまた不審者か、と思って見ていたような気がする。

生徒たちの視線を感じて、何だか緊張してきた。

ハル……。

私は心の中でその名を呼び、ジャケットのポケットに手を入れた。そして、指先でお守りを探すように、そこにあるはずの封筒の感触を探る。

それは、先月届いた二宮(にのみや)陽(はる)輝(き)からの手紙。家を出る時、迷いながらもポケットに忍ばせた私の精神安定剤のようなものだ。

この手紙の送り主、ハルと私はこの学校の同級生だった。今も毎月届くアメリカからの手紙で繋がっている私の大切な人…………。


(中略)