窓の外は真っ暗で、江の島も黒いシルエットだけになっている。
灯台の明かりが真っ直ぐに伸びていた。
七里ヶ浜の駅に着いた時、ハルはもう無人の改札の向こうへ出て歩いていた。
「ハルー!」
その背中に呼びかけると、久しぶりにマスクをしていない顔がこちらを向く。
外気を吸っていいということは、体調は大丈夫だということなんだろうか。
「つむ。俺の最後のメール、届かなかった?」
まるでここへ来たことを咎めるような言い方だった。
「届いたけど……。なんか、心配で来ちゃった。ねぇ、どうしたの?」
尋ねると、ためらうような沈黙の後、
「歩きながら話すよ」
とぶっきらぼうに言い、先に立って歩き出した。
「ま、待って」
追いかけて並んだ横顔からは、別人のように冷たい空気が漂っている。
やっぱり、私の秘密がバレたんだよね?
私への素っ気ない態度からそう確信した。
だけど、どこへ行くんだろう、と思いながら、足早に歩く彼についていく。