(前略)
九月に入り、学校が始まったせいで、またハルと一緒に過ごす時間が短くなった。
そして待ちに待った土曜日、ハルの病室には、いつにも増して多くの男の子たちが集まっていた。メールアドレスの交換をしたり、電話番号を書いて渡したりしている。
その様子を不思議に思ってみていると、ハルが私の姿に気づき、「実は仮退院できることになったんだ」と極上の笑みを浮かべた。
「ほんとに⁉」
「まだ仮釈放だから、何かあったらすぐまた召喚されるけどさ」
ハルは主治医から、『くれぐれも無理しないように』と釘を刺されたと言っているが、その顔はリードを外され、広い野原に駆け出すのを待つ子犬のようだ。
「よかったね」
父のことでずっと後ろめたさを抱えていた私は、心から安堵した。