「うん?」
うっかり私が口から発してしまった名前に反応するように、薄茶色の大きな瞳が私を見降ろしている。
目があっただけで、左胸がドキリと音をたてた。
うわっ……。や、やば……。
とにかくこの場を逃げ出したい一心で、エレベーターに飛び込んだ。
必死で【CLOSE】のボタンを押し続けたが、ゆっくりと閉まる扉に視界が遮られるまで、吸い込まれそうなほど綺麗な瞳が私を見ていた。
「あー、びっくりした……」
初めて見た二宮陽輝の印象は鮮烈だった。
普通に黒いスエットの上下を着ているのに、まるで彼にだけスポットライトでも当たっているかのように目立っていた。
青白い顔をした、小柄で痩せぎすの少年をイメージしていた私には、“衝撃的”と言っても過言ではないほどのルックスだった。
ビックリするぐらいカッコよかったな……。
頭の中で再生される二宮陽輝の姿は、PVのスローモーションシーンみたいに美しく優雅だった。
完全に心奪われている。それまで、相手がどんな性格かもわからない段階で『一目惚れ』なんて、自分には絶対在り得ないと思っていたのに。
帰りの電車に揺られながら、特別なオーラすら感じた陽輝の華やな容姿を私は何度も思い出した。
(以下略)