それまで私は、自分のことを世界で一番不幸な高校生だと思っていた。 けれど、そんな自分と同じように、本の世界にしか楽しみを見つけられないらしいもうひとりの生徒を見つけた。 それだけで、わけもなく気が楽になる。 そんな自分を最低だと思う。だけど、最悪の毎日を過ごしている私は、どうしても彼への“黒い興味”を止められなかった。 二宮陽輝。どんな子なんだろう。 想像をめぐらせながら、去っていく担任の後姿をぼやっと見送った。