「本当に?」

「本当に。それにもしそうだとしてもシヅキは成仏したいんだろう?なら別にいいじゃないか」

まただ。

シヅキの深い黒の瞳がじーっと俺を捉えて目が逸らせない。

何か変なこと言ったかな。

特に思い当たる節はないんだけど。

「まあいいや」

それから俺たちは二時間、一曲も歌うことはせずにただ話しをして過ごした。


カラオケを出ると西の空は濃いオレンジに染まり、東の空はもう暗くなり始めていた。