今日のブレンドを考えながらふとあるお客様の顔が浮かぶ。
あの子は絵を完成させることができただろうか。
何年も私の店に足を運んでくれた彼女に贈るであろうその絵を。
私も一度見てみたかったな。
うん。
今日は軽めの少し酸味のある配合にしよう。
「いらっしゃいませ」
「あの、二階の席空いてますか?」
「はい。ご案内いたします。こちらへどうぞ」
粉を挽きながら聞き覚えのある声に顔を上げると開店前に浮かんだ二人の姿が二階の席へと上がっていくのが見えた。
久しぶりに見る彼女のいきいきとした後ろ姿に。
緊張感を漂わせているまだ少し幼い背中に。
思わず目を細めてしまう。