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「お砂糖しかないんだけど……」

「そのままで大丈夫」

「かなちゃん、学校は?」

「卒業したよ。昨日、引っ越してきた。

春からはこっちの学校に通うんだ」

「もうそんな時期だったんだ。

待って?

引っ越しって……一人暮らし、するの?」

「いや、兄貴と一緒」

「あ、ああ。そっか。そうだよね。

修くんも東京にいるんだもんね」

「何?忘れてたの?」

「うっかりしちゃっただけ」

「ふーん」

かなちゃんはそれだけ言うとカップに目を落とし何か考え込み出した。

聞きたいことはまだあったけど。

とにかくいまは頭が回らない。

話しかけるのを諦めてまだ熱いコーヒーを口元へ運ぶことにした。

口に含むと懐かしい芳ばしさと苦味が広がった。