その間に、わたしの身体に変化が起きた。


下半身を覆っていた鱗が、銀色に煌きながら、はらはらと海の底へ舞い落ちていく。

鱗がなくなって現れたのは、肌色の両脚。


わたしは彼に抱きつき、言う。


「人間に恋した人魚はね、好きな人とのキスで、本物の人間になれるのよ!」


新しい両脚を彼の脚に絡ませると、彼は驚いたようにわたしの脚を見つめた。


「………本当だ、驚いたなぁ。人間になってる………」

「うふふ、すごいでしょ? ねぇ、陸に連れてってくれる?」


わたしは彼の顔を覗き込んだ。

きれいな瞳に月明かりが射して、きらきらと濡れたように輝いていた。


「………しょうがないなぁ」


彼はふぅ、とため息を洩らしてから、からりと笑った。


「よし、連れて行ってやる!」

「やったぁ!!」


わたしは飛び跳ねて喜びを表現しようとした。

でも、鱗も尾びれも失った脚では、もう、海の上で跳ねることはできなかった。


でも、いいの。


これからわたしは、この脚で、陸の上を走り回れるんだもの!

しかも、大好きな人と一緒に。