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「おねがい、サトシっ!!」
あたしは幼稚園から一緒の幼馴染、サトシに手を合わせて懇願した。
「一週間だけ、あたしの彼氏のフリして!!」
「はぁっ?」
サトシは眉をひそめて、ひどく嫌そうな顔をした。
「いやだよ!!なんでお前なんかと!?」
「だから、フリだってばフリ!!」
「フリでもいやだ!!」
「人助けだと思って!!」
「はぁ~っ!?」
サトシがいやがるのには理由がある。
サトシは中学時代から、美里ちゃんっていう可愛い女の子が大好きなのだ。
いま、同じ学年の一番はなれたクラスにいる。
しかも、最近どうやら二人はイイ感じらしいのだ。
ときどき一緒に帰ったりしているのを、あたしは何度か目撃している。
「うちのクラスのひとだけに、付き合ってるって思ってもらえればいいの」
「なんだよそれ」
「事情があんの!!」
「わけわかんねえな」
「万が一噂がひろまったときのために、美里ちゃんにはあたしから事情話して、ただのフリだって言っとくから」
「ほんとかよ~?」
「とにかく、彼氏がいるとでも思ってもらわないと、あたしの貞操の危機なの!!」
あたしの剣幕に驚いたのか、とうとうサトシは『カレカノのフリ』を了承してくれた。