「………俺さあ、昨日も、夏木さんの夢見ちゃった」


犬飼くんを突き放せキャンペーンが始まってから一週間ちょっと。

犬飼くんが不気味なことにぽっと頬を赤く染めて、そんなことを言ってきた。


あたしはぞぞぞと背筋がざわめくのを感じつつ、


「へっ、へぇ~!? 私としては心当たり全くないんだけどね〜?」


と裏返った声で答え、教室の外にいた渚のもとにダッシュした。


「莉緒、だいじょーぶ!?」

「………もう駄目かもしんない……」


あたしはげんなりしながら渚に抱きついた。

渚が厳しい目つきで呟く。


「---やはり、敵は手強いな。こうなったら、最終手段に出るしかないか………」


私はその言葉に目を丸くして、「最終手段?」とぼそぼそ訊ねる。

すると渚がにんまりと悪い笑顔を浮かべた。


「どうやら犬飼くんの鈍感さは尋常じゃないらしいからね。間接的に遠回しに伝えようとした私たちの読みが甘かったのよ」

「うんうん。なるほど。それで、どうすればいいの?」

「つまりね、直接言う……のはなかなか難しいから、見せるのよ!」