しかも、夏木さんは俺の背中をばしっと容赦なく叩いたのだから、さらに驚きだ。

俺は「いてて」と呻き、「………か、勘違いって?」と訊ね返した。


俺が『勘違い』に気づいて『変な気』を起こしたとは、いったい何の話だろう?

俺、なにか勘違いしてるの??


「………だから~。あたしが実はサトシと付き合ってて、犬飼くんのことなんか好きじゃないって………」

「えっ!?」


夏木さんの発言に、俺は度肝を抜かれた。


「うそ、それ、勘違いなの!? 俺、てっきり本当に夏木さんはサトシくんのこと好きなんだと思ってた!」


そうだ、それこそが昨日から俺の心に巣食っていた疑念。

まさか俺の勘違いだったなんて!!


「なんだぁ、そうなんだ!! 俺かなりショック受けたのに、なぁんだ俺の勘違いだったかぁ」


俺は嬉しさのあまり頬がゆるんでしまう。


サトシと一緒に楽しそうに帰っていったのは、やっぱり罰ゲームかなにかだったんだ。

そうかぁ、よかったぁ。


ってことは、夏木さんはサトシのことが好きなわけじゃなくて。

それで………。


そこで俺は、はたと動きを止めた。

ものすごーく重大なことに気づいてしまったのだ。


最近、俺と話すとき、いつも気まずそうに落ち着かなげに目を泳がせていた夏木さん。

ってことは…………。


「………えっ。も、もしかして、もしかしてだけど、まさか、まさか、夏木さんも俺のこと好きなの………?」