ちょうど校門の左右で、じっと見つめ合うミケランジェロと俺。

俺はそろそろと腰を下ろし、ミケランジェロと視線を合わせる。

ミケランジェロはじっと俺の一挙手一投足を目で追っている。


―――チャンスだ!!


そろりと手を伸ばした、その瞬間。


校門の間をすり抜けて目の前に飛び出してきた、セーラー服の女の子。

びっくりして顔を見ると、


―――夏木さんだった。


夏木さんはなぜかものすごく焦った様子で、道路のほうをきょろきょろしている。

俺はしゃがんているので、夏木さんの視界には入っていないらしい。


ふふふ、夏木さんったら、おとぼけさんだな。


俺は彼女を驚かしてやろうと思いつき、小さく笑って、

「んみゃあ」

と猫の鳴き真似をした。


夏木さんが目を丸くして、ぱっと視線を落とした。

その目が、ミケランジェロをとらえる。


「………なんだ、あんたが鳴いたのか」


夏木さんがふっと目を細め、優しい表情でミケランジェロを見つめていた。


その優しい瞳が、俺に向けばいいのに。


そう思った俺は、気がついたら、

「みゃーぉ」

と再び猫の声で鳴いていた。


夏木さんがミケランジェロから視線を上げ、俺のほうを振り向く。