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翌朝。
俺はほんのり切ない気持ちで目覚めた。
夏木さんは夢に出て来てくれなかった。
サトシの顔がちらついたけど、必死でふりはらって、俺は朝の支度を済ませた。
家を出て電車に乗り、学校の最寄り駅で降りて歩き出したところで。
「ぅみゃあ」
とっても可愛い三毛猫と目が合った。
何を隠そう、俺は昔から大の猫好きなのだ。
俺は一目でそいつに首ったけになり、ぜひとも撫でようと手を伸ばした。
でもそいつは俺が近づいた瞬間にぱっと走り出してしまった。
「あっ、待って、ミケランジェロ!」
俺は夢中になってミケランジェロを追いかけた。
ミケランジェロは小さく身軽な身体を最大限に活かして、ものすごい勢いで狭い路地を駆け抜けていく。
俺は道ばたの自転車や、家々の植木鉢や、店先の看板などを避けつつ、必死でミケランジェロの背中を追う。
街中をミケランジェロと共にぐるぐる駆けまわって。
「……あれ?」
ふと気がつくと、いつの間にかずいぶん日が高くなっていた。
そして、俺はいつの間にか学校のすぐ近くに来ていた。
「わぁ、こんな時間! 無断遅刻だ、しまったぁ」
がばっと頭を抱えた俺を、十歩ほど先のところにいるミケランジェロが、怪訝そうな顔で見上げていた。