………と自分に必死に言い聞かせてみたものの。

俺は執念深いことに、窓から外を見下ろして、夏木さんとサトシが連れ立って帰っていくのをじっと見つめてしまう。


もちろん声は聞こえないので、どんな会話をしているのかは分からないけど。

夏木さんがサトシの背中を遠慮なく叩いたり、ときどき笑顔でサトシを見上げているのが分かると、俺の胸はずきりと痛んだ。


夏木さんは、俺にあんな笑顔を見せてくれるだろうか?

俺と話すときの夏木さんは、なんだかいつも落ち着かなさげに見える。

サトシとは幼馴染みだから気心が知れてるってだけかもしれないけど………。


あんなふうに屈託なく笑う姿を見せられると、夏木さんは俺をどう思っているのか、不安でしかたがなくなってきた。


ああ、夏木さんって、サトシが好きなの?

サトシと付き合ってるの?

それにしてはやけに素っ気なく奇妙に思えるあの空気感は、幼馴染みだからこその気安さなの?


さっきまで否定していた考えがまた舞い戻ってきて、俺の心はしくしくと痛んだ。


あぁ、噂には聞いていたけど、恋って切ないものなんだ。

俺は今まさに嫉妬している。


夏木さんから屈託のない笑顔を向けられているサトシに。

気を使わずにばしばし殴られているサトシに。


あそこで夏木さんと並んで歩いているのが、俺だったら良かったのに………。


俺は心の中でほろりと涙した。