嬉しさのあまり、俺はうふふと込みあげてくる笑いをこらえきれないまま、


「………最近さ。俺たち、なんか距離が縮まったよね……」


なんてことを夏木さんに言ってしまった。


ああ、俺ってば、なんて恥じらいのない……夏木さんを見習わなきゃ。

でもほら、『思い立ったが吉日』なんて言うじゃないか。

あわよくば、このままの勢いで、ぜひにも夏木さんと………なんて考えてしまうわけで。


俺の言葉に、夏木さんはびくりと肩を震わせ、ゆっくりと瞬きを繰り返した。


きっと、周りに聞かれちゃったんじゃないかって、どぎまぎしているに違いない。

本当に、奥ゆかしい人だなあ。


俺はにっこりと笑いかけて、前に向き直った。


その日以降の夏木さんの行動も、俺に対する想いについての確信を深めるには充分だった。


朝登校してくると、夏木さんは必ず俺に、「おはよ」と声をかけてくれるし。

それなのに、廊下ですれちがったりすると、恥ずかしそうに顔を俯けるし(照れ屋さんだなぁ、ほんとに)。

昨日なんて、授業中に思わずうとうとしてしまっていたら、後ろから俺の椅子を蹴って起こしてくれたし(優しいなぁ)。


そういう夏木さんの全ての行動が嬉しくて、俺はことあるごとに振り向いて話しかけてしまう。


ああ、なんだか最近、学校が楽しくてしかたがない。

今日も夏木さんに会える、今日も夏木さんとお話できる。

幸せだなあ。


でも、夏木さんはいつになったら、俺の告白に返事をくれるんだろう?

まあ、恥ずかしがり屋さんだから、なかなか言い出せないのかな。


もうしばらくしたら、俺から声をかけてみよう。