「えぇっ、あたしの好きな人〜? えーっとねぇ………」


真後ろで夏木さんが、仲良しの吉村さんと会話をしている。


もちろん、俺の耳にもその内容は聞こえてくる。

どうやら二人は、お互いの「好きな人」について話しているらしい。

名前は出さず、どんな性格か、どんなところが好きなのか、などのヒントを出し合っている。


いかにも女の子どうしらしい会話で、微笑ましいなぁ、なんて俺は思った。


夏木さんの番になり、俺の心臓がどきどきしはじめる。


いったい夏木さんは、どんな話をするのだろう?

夏木さんの好きな人って………?


「頭が良くてー、スポーツも得意でー、顔もなかなかでー、性格も落ち着いてて人当たりがよくてー……」


………あれ?

これって、これって、俺のことかな、やっぱり……。


俺は成績も中の上から上の下ってとこで、まあまあだ(と思う)。

スポーツも、運動音痴ってほどじゃないし、一度だけ50m走で6秒台を出したことがあった。

顔は、ちょっと自分ではよく分からないな……(照)。

性格については、小学校の通知表では「落ち着きがあり、誰とでも仲良くできる」と書かれるのが定番だった。


ああ、どきどきマックス!

夏木さん、やっぱり俺のこと……?


だって、わざと俺に聞こえるように言ってる気がするし。

もしかしてだけど、シャイな夏木さんなりに、俺に想いをアピールしてるんじゃないの〜!?