「今さ、最後の夢の話、聞いてた?」


と俺が訊ねると、夏木さんは「え? あ、うん」と頷いた。

よかった、やっぱりちゃんと聞いてたんだ。


だったら、


俺は、君の姿を夢に見るくらい、君のことが好きなんだ。


……って言えば、きっと俺の想いの深さが伝わるだろう。


とは思ったものの。

「君が好き」という一言を口に出すことは、思った以上にハードルが高くて。


「昨日さあ……俺の夢に、夏木さん出てきたんだ」


俺がなんとか口に出せたのは、こんな中途半端な言葉だけだった。


なんの報告だよ………。


しかも、照れ笑いが勝手に湧きでてしまって。

なんとも情けない告白になってしまった……。


もっと計画を練ってから告白すればよかったな、なんて思いながら、ちらりと夏木さんを見ると。


「……………は?」



夏木さんは、これでもかというほど呆然とした表情をしていた。


それを見て、俺ははっと気づく。


そうか、そりゃあ驚くよね。

今までただのクラスメイト、席が近くてときどき会話する、それだけの存在だった俺が、いきなり告白するなんて。


しかも、夢に見るほど強く夏木さんのことを好きだなんて。

驚くのも仕方がない。


夏木さんはしばらくの間、なにも答えずに硬直していた。

なにか考えているらしい。


夏木さんは、女子にしてはあんまり口数が多いほうではない。

黙っていろいろ考えているタイプだ。

そういうところも、控えめで落ち着いていて魅力的だなあ。


………なんて考えていると。