でも、きれいな青空よりも、俺の心を支配しているもの。


それは、夏木さんだ。


―――なんでって?


だって俺はゆうべ、夏木さんの夢を見たから。

俺の夢に夏木さんが出てきたから。


どんな夢かというと。


俺は校舎の屋上で空を見上げていて。

すると、背後に気配を感じて。

振り向いたら、夏木さんが立っていて。


それだけ。

夏木さんも俺も、なにも言わなかった。

ただ、見つめ合うだけ。

そんな夢。


目が覚めて、俺は、「なんでこんな不思議な夢を見たんだろう」と思った。


けど、よく分からなかった。

んだけど。


いま、先生の話を聞いて、分かってしまったのだ。

目から鱗。


―――俺は、夏木さんが、好きなんだ。


そっか、そうなのか。

くふふ、やっと謎が解けた。


とてもすっきりした気分だ。


数学のテスト中に、考えても考えても分からなかった問題で、いきなり解法がひらめいて、すらすら解けちゃった。

みたいな気分だ。


俺は嬉しさのためにこみあげる笑いをなんとか抑えながら、くるりと後ろを振り向いて、


「ねぇねぇ、夏木さん」


と、愛しの夏木さんに声をかけた。


教科書を閉じて机の中に入れようとしていた夏木さんが、ふい、と目を上げて、「なに?」というように眉を上げてじっと俺のほうを見た。


俺が話しかけると、いつも夏木さんはこの表情をする。

俺の話をちゃんと聞いてくれようとしているのが伝わってきて、俺は嬉しくなる。


だから、夏木さんのこと、好きなんだ。