「うそ、それ、勘違いなの!? 俺、てっきり本当に夏木さんはサトシくんのこと好きなんだと思ってた!!」

「………ん? は?」

「なんだぁ、そうなんだ!! よかったあ、俺かなりショック受けたのに、なぁんだ俺の勘違いだったかぁ」

「………え? ちょ、ちょっと………」


なんかおかしいぞ、なんか変だぞ。

なんか噛み合ってなくないか? あたしたちの会話。


あたしが状況を把握できずにまごまごしていると、犬飼くんは何かに気づいたようにはっと顔を上げた。


「………えっ。も、もしかして、もしかしてだけど、まさか、まさか、夏木さんも俺のこと好きなの………?」

「…………はぁっ!?」


あたしの素っ頓狂な叫びが、真っ青な空の下に響き渡った。


あたしの驚愕をよそに、犬飼くんは、ぽっと赤くしながら、三毛猫をぎゅうぎゅう抱きしめる。


「なんだー、そうなの? 俺、勇気だして思い切って告白したのに、夏木さん変な顔して何も言ってくれなかったからさぁ、俺てっきり、やっぱ脈ないのかなぁ、なんてへこんでたのに」

「………ちょっとちょっと、待ってよ犬飼くん。あなたがいつ私に告白しました?」


あたしが冷や汗を垂らしながら確認するように言うと、犬飼くんは驚いたように目を見開いた。


「えっ、だから先週、古典で夢の話が出たときに………」

「うんうん」

「俺の夢に夏木さん出てきたって」

「うん、言ってたね………ってちょお待って、それが告白!?」

「そうだよ!」

「待って待って待って、少し話を整理しよう!」