「…………ななななにしてんのこんなとこで!?」


あたしが戸惑いながら訊ねると、ぱっと走り出した三毛猫をがしっと捕まえた犬飼くんが、へらりと笑った。


「やっと捕まえた〜♪」


くふふと笑い声を洩らしながら、犬飼くんは三毛猫に頬ずりをする。


「いやぁ、朝くる途中にこの猫見かけてね、めっちゃ可愛いからちょっとひと撫でしようと思ったんだけど、こいつすばしっこくて」

「はぁ………」

「悔しいから絶対なでてやるーって追いかけてたら、こんなとこまで追いかけっこしちゃったよー」

「………はぁ」


にへにへ笑いながら三毛猫と戯れる犬飼くん。


なんだか拍子抜けだ。

慌てて走ってきて損した気分………。


「ってか、夏木さんこそ、こんなとこで何してんの? いま、授業中でしょ?」


きょとんとした顔で訊ねてくる犬飼くんの表情に、あたしはぐったりと項垂れた。


「………犬飼くんが、勘違いに気づいて、変な気起こしたんじゃないかと思って、慌てて出てきたんじゃん! それなのに、もー、なんなのよ!!」


あたしはムカついて犬飼くんの背中をばしっと叩いた。


犬飼くんは「いてて」と目を丸くしてから、


「………か、勘違いって?」


首を傾げて訊いてくる。


「………だから〜。実はあたしがサトシと付き合ってて、犬飼くんのことなんか好きじゃないって………」

「えっ!?」


あたしの言葉に、犬飼くんが大げさなほど仰け反った。