ぽかんとして見ているうちに、犬飼くんはなぜか、ふらふらと校門の外を通り抜けていく。


「―――先生、ちょっと出かけてきます!」


我ながら間抜けな一言を残し、あたしはみんなの視線を一身に集めながら、教室の後ろを横切って廊下に飛び出した。


そのままの勢いで、校舎も飛び出す。


グランドを全速力で駆け抜け、校門を通り抜けて外に出た。


学校の前の大きな幹線道路。

車がびゅんびゅんと通り過ぎていく。


犬飼くんは………?

まさか、車に――――



「んみゃあ」



…………ん?


場違いな声と、足元をかすっていく柔らかい感覚に、あたしはぱっと視線を落とした。


そこには、一匹の三毛猫。


「………なんだ、あんたが鳴いたのか」

「みゃーぉ」


…………ん?

なんだ、やけに低い鳴き声だなあ。


ってか、あれ?

この猫とは反対側から鳴き声が聞こえたような………。


反射的に振り向くと。


「みゃお、夏木さん」


歩道のど真ん中に座り込んであたしを見上げている学ランが。


「………えっ、犬飼くん!?」

「みゃっほー」


犬飼くんは、『やっほー』というように軽く片手を挙げて立ち上がった。