部活を終えて、自転車置き場に向かうと、一人で立っている今井くんが見えた。


…………うわ、気まずいな。

今井くんが帰るまで、どこかに隠れてようかな………。


そんなことを考えていると。


「あ。神山さん」


早くも見つかってしまった。

あたしは地面を見ながら「おつかれ」と言って、自分の自転車のハンドルに手をかけた。


「………あのさ……待ってたんだ」


今井くんの声が、ふいに近くで聞こえて、あたしは思わず「へっ?」と間抜けな声をあげつつ顔を上げた。

今井くんがどこかきまりの悪そうな表情で、少し笑っている。


「………一緒、帰ってもいい?」

「あ、うん………」


あたしたちは、自転車を押しながら、校門に向かって並んで歩き出した。


「…………」

「…………」


うわ、やっぱ気まずい。

昨日までは、なにも気にせず世間話できてたのに………。


もう、バカ男子たちのせいだ。

ほんと、いやになる。



「………あの、さ」


校門を出てしばらくして、周りに生徒の姿がなくなったとき、今井くんがふいに口を開いた。

あたしは相変わらず自分の爪先を見ながら、「ん?」と小さく答える。


「…………今日、なんか、ごめんな」

「え?」

「いや………あいつら、大石とか、服部がさ、なんか、いろいろ………」


今井くんがもごもごと言う。

あたしはちらりと今井くんの顔を見てから、「ううん、べつに……」と呟いた。