お昼を終えて、5時間目の用意をしようと、あたしは廊下のロッカーに教科書を取りに行った。


教室に戻ろうとしたとき、中から出ようとしてきた学ランにぶつかりそうになって、あたしは足を止めた。


「あ、ごめん」


そう言ってあたしを見下ろしているのは、今井くん。


不意打ちに驚いて、あたしは思わずぱっと顔を背け、道を開けた。


「ありがと」


今井くんがそう言ったけど、あたしは顔を上げられなかった。


みんながあたしたちを見てる気がする………。


あたしはなんとか何事もなかったような顔をつくって、さっと教室の中に入った。


もちろん、俯いたまま。

誰かと目が合ったりしたら、何を言われるか分からないもん。


あーあ、なんか、やだな。

すごく、いやだ。


顔を背けたりなんかするつもりじゃなかったのに。

今までだったら普通に「どういたしまして」なんて笑って返してたのに。


変な感じになっちゃったじゃん。


みんなの前であんなこと言われたせいで、今井くんのことを妙に意識してしまう。

みんなから見られてるような気がして、今井くんを直視することすらできない。


逆にあやしまれちゃうよ。

あー、やだやだ、いやだ、もう。