顔もスタイルも抜群に格好いいし、独特の雰囲気があって、無口であまり笑わない、少し陰のあるミステリアスなところに惹かれた。


話してみると音楽や本や映画の趣味が合って、話していると楽しかったし、

ちょっと口は悪いけど、実はけっこう優しい。


そして極めつけに、ときどき笑ったときの笑顔が意外とすごく可愛くて、完全にノックアウトされた。


大きなケンカもなかったし、別れ話もしたことがなかった。

だから、ずっと一緒にいられると思っていたのだ。

思っていたのに。


まさか、こんな日がくるなんて。


そのとき、店員さんが追加のビールを運んできた。


「どうも」と微笑んでジョッキを受け取ったケイが、「まあ、飲め飲め」と私に手渡してくれる。


「飲んで飲んで、酔いつぶれるまで飲め。そして忘れろ」


そんな、昔のどこぞの歌謡曲みたいな台詞とともに。

私は思わず小さく笑った。


「なんだっけ、それ。何かの歌詞だよね」

「酒と泪と男と女。河島英五の」

「そうだそうだ。うちのお父さんが好きでよく歌ってた。でもあれ、悲しいことがあったら男は酒を飲んで、女は涙を流す、じゃなかった?」

「確かにそうだな。でもまあ、嫌なことがあったら飲んで忘れたいっていうのは男も女も同じだろ」


私はふふっと笑みをもらした。

そういうリベラルなところは彼の美徳だと思う。


「本当にね、付き合ってるときは、ものすごく上手くいってたの」


口に出してすっきりしたくて、私はさらに愚痴を続ける。

酒を飲んで酔うだけじゃ足りない、涙を流したって足りない。誰かに話を聞いてもらいたいのだ。


「どれだけ一緒にいても飽きなかったし、ケンカもしたことないし、黙って肩並べてテレビ見てるだけでも幸せでね」

「ふうん」

「私はもう、カズ以外の男の人なんて考えられないし、カズだって私のこと他の女とは違うって、お前が一番話が合うって言ってくれて、私も同じこと思ってたし、ああ私たちは運命なんだって思ってたの」

「なるほど」

「それなのにさ、就職したころからおかしくなって。今までずっと一緒にいたのに、時間も休みも合わなくてなかなか会えなくなって。もっと会いたいなって思ったけど言えないし、でも会えないのは寂しいし、もうどうすればいいのって感じで」

「そうか」