「俺はさ、」


ケイの言葉で我に返る。

目を向けると、彼は気まずそうに視線を逸らした。


「本当は、こういうこと訊くのってみっともないし情けないって思ってるんだけど。でも、どうしても気になるから、訊いてもいいか」


その頬や耳たぶがいつもより少し赤い気がするのは、本当に寒さのせいだろうか。

私は、うん、と頷いた。


「今のミキはさ、カズと俺だったら、どっちが好き?」


心臓が跳ねるのを感じた。

ケイと、カズ。そんなの。


「比べられないよ……。だって、ケイとカズは全然ちがうもん」


だよな、とケイは笑った。


「そうだよな。俺とカズって全然タイプちがうし」

「うん」

「だから、お前も、俺といるときとカズといるときとでは、たぶん全然ちがうんだろうな」


その通りだと思った。

私はカズといるときは嫌われないように、面倒だと思われないように、ということばかり考えて、自分の思い通りに行動することなどなかった。

でも、ケイといるときはちがう。私は何も考えずに、思いのままに話し、笑うことができる。


「これだけは、俺、自信もって言えるんだけど」

「なに?」

「俺と一緒にいるときのミキが、本当のミキだ。素のままで何も飾らずに、自分に正直なミキだ」

「……うん」


ケイはすごい。私のことをなんでも分かってしまうようだ。


「俺はさ、大学時代、カズと一緒にいるミキを何回も見たことがあったけど」

「うん」

「俺の隣にいるときのミキのほうが、もっとずっと可愛い顔してると思ってたよ。カズが知らないミキの魅力的な表情を、俺はたくさん知ってんだぞ、って心の中で思ってた」


馬鹿だよな、とケイは笑った。

やばい、どうしよう、動悸が止まらない。


「でも……ケイといるときの私なんて、愚痴ってばっかりだし……嫌気さすでしょ」

「でもまあ、お前が愚痴言えるのなんて、俺の前だけだろ。だから俺はお前の愚痴を聞かされるのは嬉しいよ。それに、ミキは笑っても怒っても泣いても可愛いからさ」


どきどきしすぎて吐きそうだった。


なんだろう。

ケイってこんなこと真顔で言うキャラだったか?