「……最近さ、絵を描き始めるときに森下さんが言っていたことの意味がよくわかった気がするんだ」

 そう言うと、彼女はくりくりとした瞳を向けて「それってどのこと?」と聞いた。



「絵本だけど、対象年齢は高め、っていう話。

もし、小さい子向けだとしたら、イルカの話を聞いた時点で男の子はピョンピョン跳べるようになってるだろうなって思ったんだ」


 彼女は嬉しそうに「そうなの」と言って口元を緩めた。



「確かに、小さい子向けの絵本って、

一回で状況が好転して、それでハッピーエンドになるよね」


「うん、そんな感じ、する」


「あと、イルカのシーンもそうだけど、今描いてもらってるシーンも、『せっかく縄回しで活躍できるようになったのに、一回しか体力が続かないなんて…』って読む人は思うよね」


 彼女の言葉に、僕は頷いた。

そして、そんな部分でさえも自分と重なる部分があることを話した。

物語の主人公も、自分も、一筋縄ではいかないというもどかしさを感じている。