じいちゃんの言うことはすごくよくわかったけれど、ひとつ引っかかることがあった。


「でもさ、自分より先にいなくなっちゃうことなんて、思いもしなかったでしょ?」


 僕は、思ったことを自然と口にしていた。


「いいや。

自分より先には死なないだろうなんて思いながら接していたら、本当にそうなったときに後悔するだろう。

だから、そう思うことをやめたんだ」


じいちゃんが、父さんと母さんのことを明るく語ってくれるのは、僕に気を遣っているのではなくて、本当に、いつ別れても後悔しないように生きてきたからなんだとそのとき気が付いた。



僕はそれを聞いて、すごいと思った。

自分が両親と別れることになってしまったとき、僕は両親がいることが当たり前だと思っていたはずだ。

いつかくる別れなんて想像もしていなかっただろう。


じいちゃんの言葉は僕の胸にすっと染み込んだ。


そして僕もそんな生き方をしたいと強く思った。