「そういうことだ。
そのことに気付いたのは、残念ながらお前のばあちゃんが天国に行ったあとだった。

じいちゃんは、その日も当たり前に妻が自分の帰りを待っていて、
ただいまと言えばおかえりと言って迎えてくれると思い込んでいたんだ。

でもそれは当たり前なんかじゃなかった。

本当にやりきれんよ。

人間にとって最大の不幸は死そのものではなく、後悔の残る別れを迎えてしまうことだ」


じいちゃんは、ふぅと一呼吸をおいた。


「でもな、死や別れと違って、『後悔の残る別れ』というのは生き方次第で防ぐことができるんだよ。


じいちゃんはそのことを学んで、息子や娘との別れがいつ訪れてもいいように、最良の別れのために努力をし続けたんだ」