「こんにちは」
「学校帰り? 暑いでしょ、乗りたまえよ」
くいと男前に親指で車を指して運転席に座ったので、私も歩道と車道を隔てている柵を乗り越えて助手席のドアを開ける。
青井さんが、座席の上にあった大きなバッグを後ろに置いた。
「すみません、あの私、食べてる途中で」
「見ればわかるよー、声かけたの、それが目的でもあるし」
私が持っていた大判焼きの紙袋を、にやりと笑って指さす。
私は吹き出し、「ツナと粒あん、どっちがいいですか」と聞いた。
「ツナ、お昼食べてないの!」
「車内で食べてもいいですか?」
「もちろん。あ、タダでもらったりはしないからね、はい」
大判焼きを受け取る代わりに、コンソールボックスから百円玉を3枚くれる。
乗り込みかけていた私は、一度歩道に戻って自販機まで行き、そのお金でコーヒーとジュースを買って戻った。
「はい、どうぞ」
青井さんはぽかんとして、それから笑った。
「郁実ちゃんの飲まないほうちょうだい」
「じゃ、ジュースいただきます」
「どこ行くところだったの?」
「図書館です」
「じゃ、そこまで行くね、出すよー」
車の中は、冷房が効いていて気持ちいい。
後部座席に置かれた、使いやすそうなバッグには、ファイルやPCが詰まっていて、いかにも仕事中って感じだ。
車内はなんとなく、大人の女の人の香りが満ちている。
「これ、ご自分の車ですか?」
「そう、うち営業車少ないから、各自がマイカー使ってもいいの。ガス代は会社から出るし」
健吾くんから聞いたところによると、青井さんは健吾くんと同い年ではあるけれど、関連会社からの"出向"で来ているので、同期ではないらしい。
遠藤さんのほうは健吾くんと同期入社。
出向ってなに? って訊いたんだけど、いくら説明してもらってもよくわからなかった。
「学校帰り? 暑いでしょ、乗りたまえよ」
くいと男前に親指で車を指して運転席に座ったので、私も歩道と車道を隔てている柵を乗り越えて助手席のドアを開ける。
青井さんが、座席の上にあった大きなバッグを後ろに置いた。
「すみません、あの私、食べてる途中で」
「見ればわかるよー、声かけたの、それが目的でもあるし」
私が持っていた大判焼きの紙袋を、にやりと笑って指さす。
私は吹き出し、「ツナと粒あん、どっちがいいですか」と聞いた。
「ツナ、お昼食べてないの!」
「車内で食べてもいいですか?」
「もちろん。あ、タダでもらったりはしないからね、はい」
大判焼きを受け取る代わりに、コンソールボックスから百円玉を3枚くれる。
乗り込みかけていた私は、一度歩道に戻って自販機まで行き、そのお金でコーヒーとジュースを買って戻った。
「はい、どうぞ」
青井さんはぽかんとして、それから笑った。
「郁実ちゃんの飲まないほうちょうだい」
「じゃ、ジュースいただきます」
「どこ行くところだったの?」
「図書館です」
「じゃ、そこまで行くね、出すよー」
車の中は、冷房が効いていて気持ちいい。
後部座席に置かれた、使いやすそうなバッグには、ファイルやPCが詰まっていて、いかにも仕事中って感じだ。
車内はなんとなく、大人の女の人の香りが満ちている。
「これ、ご自分の車ですか?」
「そう、うち営業車少ないから、各自がマイカー使ってもいいの。ガス代は会社から出るし」
健吾くんから聞いたところによると、青井さんは健吾くんと同い年ではあるけれど、関連会社からの"出向"で来ているので、同期ではないらしい。
遠藤さんのほうは健吾くんと同期入社。
出向ってなに? って訊いたんだけど、いくら説明してもらってもよくわからなかった。