でも、途端に恐ろしくなる。


気持ち悪いって思われたんじゃないか。

もしかして俺のこと好きなの? って引かれたんじゃないか。


だから、彼方くんが「なんで?」と独り言のように呟いた瞬間、私の口からそんな言葉が飛び出したのだ。


「ちがうの。あのね、彼方くんの身体が好きなの。だから描きたかったの」


言ってから、しまった、と深い後悔に襲われた。

身体が好きって。

違うのに。いや、違わないけど。

確かに彼方くんの骨格や筋肉の付き方は理想的だと思うけど、身体が好きだなんて言い方は、あまりにも恥ずかしい。

かといって、『彼方くんが好きだから描いた』なんて言えるわけもないから、なんとかごまかそうとしたら、そんなことを口にしてしまったのだ。


ああ、大失敗だ。どうしよう。

でも、言ってしまったらどうしようもない。


彼方くんはきょとんとした顔をして私を凝視していた。

その頬がほんのりと赤く染まっていく。


「え……身体が……好き? 俺の?」


そんなわざわざ繰り返さなくてもいいのに。

私は顔の熱さで死んでしまうんじゃないか、と思いながらうつむいた。


うん、とも、いや違う、とも言えなくて、黙っていることしかできなかった。