「遠子! 見て、見て!」


遥が興奮した様子で私を手招きする。

私は彼女に呼ばれるままに、教室の後ろの掲示板に貼られた名簿を見た。


「英語、Aクラスに上がったの!」


遥が嬉しそうに自分の名前を指差す。


「本当だ、おめでとう」

「遠子と同じクラスだね」


そう言ってから彼女は頬を赤く染めて、「それでね」と声を低くする。


「彼方くんも、同じクラスになってるの。やばいよ!」


どきりとして私は名簿に目を走らせた。

確かに、彼方くんの名前があった。


私と、遥と、彼方くん。

とうとう、三人が同じクラスで授業を受けることになってしまったのだ。


考えただけで気が重かった。

思わずため息が洩れそうになるのを必死にこらえる。


「ほんとやばい、めっちゃ嬉しい、彼方くんと一緒の教室に入れるとか、夢?」


遥は本当に嬉しそうだった。

両手で頬を軽く押さえる姿は、見とれてしまうほどに愛らしい。


こんなに可愛い女の子から好意を寄せられていると知ったら、どんな男の子でも嬉しいだろう。

きっと、彼方くんも。


「どうしよう、これってすごいチャンスだよね。勇気出して話しかけちゃおうかな……」


遥がひとり言のように小さく呟いた。