大学一年生の白井恒は図書館で不愛想な青年・遠坂渡と出会い、なかば強引に友情を結ぶ。他人と打ち解けない渡と少しずつ親しくなる恒だが、ある時、不思議な少女の声を聞くようになる。渡に三年も意識が戻らない義姉・深空がいると知り、声の主が彼女ではないかと思いながら、恒は眠る彼女に惹かれていく。
やがて恒は渡に深空を殺そうとした過去を打ち明けられる。渡にとって死にゆく深空は罪の象徴であり、初恋の相手。恒は深空に惹かれる自分を感じながら、渡のためにも彼女が目覚めることを願うようになる。
しかし、深空の兄の手により、渡は贖罪を果たせないまま死んでしまう。
残された恒は、意識が回復した深空に寄り添い、渡の代わりに彼女を守ることを決意。
時は流れ、恒は自分の娘の中に、渡の影を見る。友の命は失われたけれど、彼の欠片を次につなげられた。渡と自分が出会ったことには意味があったのだと、恒は親友と過ごしたひと夏を思い出す。(398字)