『その人たちのために』
新太が言ってくれたその言葉に、今更気付く。
私が世界を見限ろうとしたあの日、駆けつけたお父さんとお母さんは、泣いていた。
あの涙は、『どうしてこんなことを』という意味ではなく、もしかしたら『無事でよかった』の意味だったのかもしれない。
そうやって、私が生きていることを喜んでくれる人がいる。
こうやって、たったひとつの問いかけに、真っ直ぐに向き合ってくれる人がいる。
『生きてほしいって、思ってるよ』
それだけで、充分意味のある世界。
「……っ……」
胸いっぱいに込み上げる感情とともに、今日何度目かわからない涙が、視界をにじませた。
人前でこんなふうに泣くなんて、かっこわるい。
そう思うのに、新太の前ではその涙を隠すことなんてできない。
「っ……うわぁぁんっ……ぐすっ、うっ、うわぁぁぁーっ……」
「……よしよし」
幼い子供のように声をあげて泣く私に、新太は涙ごと包むように抱きしめた。
何時間も駆け回り乱れた髪を、優しく撫でる手。
触れる体温と、耳をあてれば聞こえる鼓動。
それらが今はただひたすらに、愛しいと思ったんだ。
その感情ひとつだけで、充分意味のある世界。
ほんの小さなあかりが
心を、照らしてくれる