涙を手で拭いうなずいた私に、新太は微笑み、手を引いて家を出た。
「とりあえず、この辺りをまた全部探してみよう。木の上から茂みの中まで、くまなくさがすんだ」
「……うん」
「あとは、全力で名前を呼んであげて。聞こえたらきっと、応えてくれるはずだから」
その大きな手は、教えてくれる。
大丈夫
大丈夫だよ、って。
だから今は、信じて名前を呼ぼう。
「トラー!おーい、トラー!」
「トラーっ!どこにいるのー!?」
それから私と新太はふたり、ひたすらその小さな体を探し回った。
家の周りや近くの公園、茂みの中まで、喉がかれそうになるほど大きな声で名前を呼びながら探したもののトラは依然として見つけられず……。
気付けば辺りは真っ暗で、冷たい空気に星がきらめく、冬の夜空が広がっていた。
「いない……」
「ったく……どこ行ったんだか」
考え出すとまたよぎる不安に、自分の顔がゆがむのを感じた。
「大丈夫かな、トラ……さらわれたりとか、事故とかっ……」
「大丈夫だよ。全く知らない人にも車にも近付かないし」
「でも、もしもなにかあったら……」
つい嫌なことばかりを考え感情的になってしまう私に、新太は『落ち着いて』というように、つなぐ手にぎゅっと力を込める。