ひと眠りして冷静になった頭で考えれば、今朝の私は新太に対して当たってしまった。
このままここにいたい、なんて無理だとわかっていた。
けど新太ならもしかして、なんて勝手に期待をして裏切られた気持ちになっていただけ。
そこからどんどん、気持ちはヒートアップしてしまって……最低だ、私。
呆れたかな
結局なにを言ってもムダだと思われたかな。
『新太にはわからないよ!』
弱い私の、ただの八つ当たり。
感情にまかせて言葉を浴びせるなんて、今まで自分がされてきたことと同じことを彼にしてしまった。
……謝らなくちゃ。
罪悪感に胸を押し潰されそうになりながら、私はゆっくりと立ち上がり、音を立てないように居間へ向かう。
新太と顔を合わせるのはきまずいけど、このままでいるのもいやだ。
悪かったのは自分だし……『ごめんなさい』って、ひと言伝えよう。
そう勇気を出して居間をコソっと覗き込む。
けれど、そこには誰ひとりの姿もなく新太はいない。
あれ、新太、部屋にいるのかな……。
そう思いながら一応台所も覗き込んでみるものの、そこにもやはり新太はいない。
代わりにどこからかやってきたトラが、『やっと起きた?』とでもいうかのように私の足にすり寄ってきた。