「……新太も、やっぱり私のこと、迷惑だって思ってる?」

「……そうじゃない。迷惑とか、邪魔だとか、そういうことじゃなくて」

「じゃあなに!?」



ひどく取り乱す私に対しても新太は冷静なまま、こんな時まで目と目を合わせて話をしようとしてくる。

そんな真っ直ぐさから、逃げるように立ち上がる。



「中途半端に優しくするくらいなら、優しくなんてしないでよ……」



そして逃げるようにその場を歩き出そうとすると、新太は引き留めるように私の腕を掴んだ。

腕にぐっとこめられた力は痛いくらい強く、こんな時になって、彼が自分とは違う、男性であることを思い知る。



「やだ、離して……」



無言のまま腕を掴む新太の表情に、いつもの明るさや優しさは見えなくて、その感情は読めない。

初めて見る顔、だ。



これまでなにひとつ深く聞いてこようとしなかった新太は今、その目で真っ直ぐに、私の心と向き合おうとしてくる。



いやだ、見ないで。

突きつけないで

弱いままの私の心、を。



進む?どこへ向かって進めばいい?

あの場所に戻っても、記憶が足を引っ張って、どうせどこにも進めない。



戻る?どこからならやり直せる?

どこからやり直せば、こんな私に辿り着かずに生きていけたの。



進めない、戻れない、ここにもいられない

どうしたらいい?

どうしたらよかった?

わからないよ、どんなに考えても苦しんでも、わからない。



こんなふうに、また、苦しい心に溺れそうになることを繰り返すのなら。