「ここに土を入れます!」
「へ?う、うん」
「そして種をまいて、毎日水をあげるだけ!」
隣にしゃがんで見ていれば、手早く数種類の種を植えた新太は、土で汚れた手をパンパンッと払う。
「これはね、たしかプリムラの花。こっちがマーガレットでこっちがビオラ。全部、今から育てれば春には咲く花だよ」
「……覚えきれないんだけど」
「あはは。毎日水あげて、少しずつ育っていくのみるうちに覚えるし愛情もわいてくるよ」
愛情、ねぇ……。
花を育てるのなんて、小学生の頃に授業でやった以来だ。
園芸なんて柄じゃないけれど、まぁ毎日ヒマだし……水やりくらいならしてもいいかもしれない。
そんなことを考えながら、土に種を植える新太の手元をじっと見つめた。
「これ、わざわざ買って来たの?」
「ううん。昨日の夜近所の人が来て、庭づくりが好きだったじいちゃんのために『庭に植えてやってくれ』ってくれたんだ」
新太の視線が向く先を追いかけるように見れば、庭のいたるところには、枯れてそのままになった草花や、空っぽのままの割れかけのプランターが置かれている。
やっぱり、昨日思った通り庭造りはおじいちゃんの趣味だったんだ。