どうして、だろう。
新太といると、心が軽くなっていくように感じられるのは。
「……ていうか、いいのかな」
思えば私、この家に来て新太に甘えっぱなしな気がする。
三食ご飯を作ってもらって、片づけも掃除も、全部新太がしている。
洗濯は、新太いわく買い替えたばかりだという最新式の洗濯乾燥機のおかげで、今こうしてお風呂に入っているあいだにできているけれど。
これらの家事に加えて、昼間も思ったように、新太には勉強もバイトもあるわけだし。
……なにか、私にも出来ることってないのかな。
けど私不器用だから料理も出来ないし、掃除も下手なんだよね。
ていうか、新太のほうが手際がいいから、下手にやったら邪魔かもしれない。
「はぁ……」
自分の女子としてのレベルの低さに溜息をつきながら、ザバッと浴槽からあがった。
そして脱衣所へと出ると、そこに置いてあったはずの白いタオルがないことに気付く。
「あれ……?」
たしか私、持ってきておいたはず……。
そうキョロキョロと辺りを見渡せば、脱衣所の茶色い引き戸がかすかにあいている。
もしかして、トラが……そう嫌な予感がした、その時。
「あれ、なぎさー。トラが向こうで遊んでたタオルってもしかし、て……」
ガラッと思いきり開けられたドアと、そこから姿を現した白いタオルを手にした新太。
当然そこにあるのは、まだ濡れたままの体に布一枚すらも身に着けていない私で……。
「あ、えーと……」
「っ~……イヤーーー!!!」
一気に込み上げる恥ずかしさをそのまま表すかのように手を振り上げる。
躊躇いなく新太の顔を平手打ちすると、パーンッ!!と大きな音とともに、新太の「ぎゃあっ!!」という短い悲鳴が響き渡った。