こうして見ると、やっぱり顔はかっこいい。

モテるんだろうな、きっと。にぎやかだけど、それもよく言えば明るいということだろうし、面倒見もいいし。


けど遊び回っている様子もないし、スマホを頻繁にいじっている様子もないから、たぶん彼女はいなさそう。



……って、私には関係ないけどさ。

なぜかほんの少し安心している自分の心を見なかったことにして、視線を新太の手元へ移した。



見れば、テーブルの上には読みかけの本のほかにもいくつか本やノートが重ねてある。

そこには『トレーニング理論』や『栄養管理』『基礎代謝』など、少し難しそうな言葉が並ぶ。



そういえば、スポーツトレーナーになる、って言っていたっけ。

スポーツだけじゃなく、健康や栄養に関することまでいろいろ考えるんだ。



学校に行かない日もこうして勉強して、バイトも行って、その中で毎日ごはんも作ってくれて……彼をすごいと思うと同時に、正反対と言っていいくらいだらしない自分に少し呆れる。



……このままじゃ、体冷えちゃうよね。

そう思い、私はたたんである布団の一番上に置かれていた毛布を一枚手に取ると、それをそっと新太の肩にかけた。

そして起こしてしまわぬように、なにも声をかけることなく、部屋をあとにした。



声をかけるように、って言われたけど、寝ているなら仕方ない。

どうせ近くを少し歩くだけ。この辺りの道もよくわからないから、遠くへはいけないし。



そうスニーカーを履くと、家を出た。