寝て、起きて、ゴロゴロと過ごすうちに時計の針は19時を指す。
室内もすっかり暗くなり、テレビの明かりだけが目を刺激する。
そろそろ電気をつけようかな。そう考えていると、自分の部屋のドアの向こうから、バタン、ガサガサ……と玄関のドアの音や買い物袋などの音が聞こえてきた。
その音は、お母さんが帰ってきたことを知らせる音だ。
……ってことは、お父さんももうすぐ帰ってくるかな。
聞こえてくる生活音を遮るように、私は布団を頭からかぶった。
すると続いて聞こえてきたのは、コンコン、と小さくドアをノックする音。
「……なぎさ?ただいま、ごはんは食べた?」
「……もう食べた」
「そう……わかった」
閉じられたままのドアをはさんでの、短い会話。
腫れものに触れるようなその声を聞くだけで、息が詰まりそうになる。
いつもならそれで終わるはずが、今日はどうしてか、ドアの前から去って行く音はしない。
なんだろう、とテレビを消してドアの外に耳を傾ける。
「……なぎさ、あのね。お母さんたちいろいろ考えたんだけど、このままじゃダメだと思うの」
すると、聞こえたのは、お母さんの小さな声。
このままじゃダメ?
だからなに?
『出てこい』、『学校へ行け』、そう言うつもり?
その言葉の続きを想像しただけで、カッと感情がたかぶり、私は手もとにあった雑誌を思いきりドアに投げつけた。