東京・世田谷の住宅街の中心にある、白い外壁が目立つ10階建てのマンション。
辺りは緑で囲まれて、敷地内には公園もあり、立派なエントランスホールも備わっている。
そんなマンションの9階にある、表札に『深津』と書かれたわが家は、4LDKのそれなりに広さがある家。
広々とした明るいリビングには大きなソファとテレビが置かれているけれど、その家具の立派さが惨めになるくらい、室内にはひとけがない。
それはもちろん、今日も同じ。
誰もいない静かな家で、私は冷蔵庫からお茶のペットボトルを1本手に取るとひと口飲み、雑に玲倉庫に戻す。
そしてふたたび自分の部屋へと戻って行った。
シングルベッドと小さなテレビ、学習机、それらを置いただけでいっぱいになってしまうほどの小さな部屋。
そこでテレビをつけると、またドサッとベッドに寝転がる。
『今日は12月1日、木曜日。今日の東京は大変いいお天気で……』
騒がしいテレビの音だけがひとりきりの部屋に響いた。
早起きのための目覚まし
『おはよう』のメールをするためのスマホ
学校へ行くための制服
なにひとついらない、これが私の日常だ。