そんな風に笑えるなんて、新太にとっては、楽しい高校生活だったんだろうな。
私なんかとは違う、毎日だったんだろう。
『一番楽しい年頃』……なんて、なにが。
記憶がよみがえるとともに、自分の顔から表情がスッと消えていくのを感じた。
「……楽しくなんて、ない。見ての通り、学校にも行けてない不登校だし。ただの引きこもりだし」
毎日が嫌、友達なんていない、家族ともうまくいってない。
なにひとつ、楽しいことなんてない。
こんな気持ち、新太にはきっとわからない。
一気に込み上げる真っ暗な感情。
その気持ちを感情には表さず、目の前の皿を見つめたまま淡々と言うと、『そんなこと言わない』とたしなめるような言葉をかけられるのを想像した。
けれど、次に新太からこぼされたのは「そっか」という穏やかな声だった。
その言葉に驚いて顔をあげると、彼はにこりと柔らかな笑みを見せていた。